ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

クワイエット・プレイス 感想




製作:2018年アメリカ
配給:東和ピクチャーズ



2020年、謎の凶暴なエイリアンにより人類は滅亡しかかっていた。そのエイリアンは盲目だが聴覚が鋭く、音に反応して襲ってくる。そんな中、手話で意思疎通し極力音を立てないよう生活することで生き延びている一家がいた。彼らは幼い末っ子を失いながらも音を立てない生活を続けていたが、ある時母親が第3子を妊娠する。彼女は無事に出産することができるのか。









いやー、これは大変面白かったですね。
「音を立てると殺される」なんてのはホラー映画では定番の恐怖の煽り方ですが、それをより徹底して最初から最後までずっと貫き通したうえ、そんな世界での生活や出産・育児をテーマに持ってくるなどというやり口は非常に新しいホラー映画体験をもたらしてくれました。


ほとんどの場面で生きるか死ぬか、ギリギリの緊張感がみなぎっており一時も気の休まる時がありません。そのうえ基本しゃべらないし静寂に包まれている中、うっかり音を立ててしまってエイリアンが!みたいなシーンが結構あるので心臓に悪いです。面白かったけどジャンプスケアは大変苦手なので少々疲れました。





ホラー映画の導入ではまずお手本的に誰かが殺されるところを見せてくれるものですが、本作が上手いなあと感心するのはそのいけにえ役に幼い末っ子を持ってきたところです。アメリカ映画では幼児は殺さないという暗黙のルールがあるとか。創作とはいえ別にあえて観たい絵面でもありませんからね。しかし、最近はそれも破られることが増えてきました。


「子供でも死ぬよ」という宣言をいきなりされてしまうとその後の緊張感はやはり全く違ってきます。本作の主役であるアボット一家の構成は殺された末っ子を除くと父・母・姉・弟の4人。おそらく姉は中学生で弟は小学生くらいかなという年頃なので普通なら殺さないだろと安心して鑑賞するところですがそれも許されない。
末っ子の死の責任を巡って家族間にほどよく亀裂を入れるという役割もあったり、音を立てるとこんな目に遭うということをまず見せるだけでなく色々な意味が込められており暗黙のルールを破っても仕方のない必然性があります。



で、末っ子が死んだせいかどうかは分かりませんが、音を立てられない世界だというのに母親が妊娠してしまいます。声も出さずに手話を使い、靴も履かずに砂を撒いて裸足で歩かねばならないほど音に厳しい世界でそれはアリなのか? と問われれば私としては「ナシ」ですが、まあアボット一家が家族を増やしたかったのなら仕方ない。



のですが、百歩譲って出産時に何とか無音で通したとしても、生まれてくる赤子の泣き声は一体どうやって隠そうというのか。千歩譲って生まれてきた時は泣かなかったとしても、その後数年間一度も泣かせないつもりなのか。
そこら辺は一応の対策が取られているものの、かなり無理やりくさい。ここが本作の肝であるだけに、ここを受け入れられるかどうかが評価の分かれ目ですかね。私は独身男なのでまあそんなものかとスルーできましたが出産子育てを経験した人は絶対あり得ないだろと思ってしまうかもしれません。



とはいえその出産シーンでの恐怖の煽り方には尋常でない気合の入れ方が伺えます。音さえ立てなければ安全だが、どうしても音を出さざるを得ない状況。
ここ数年ではちょっと記憶にないくらいの緊張感を強いられました。怖い思いをしたい、スリルを味わいたいホラー映画ファン的には感涙にむせび泣くクオリティの恐怖シーンです。
この手の映画で一番死にそうなのは父親、だが子供たちが死んでもおかしくはない、でも一番の危機に陥っているのは母親、そして赤ん坊。死亡フラグが読めず、別行動をとっている家族それぞれの見せ方のバランス感覚がすごくいい。
ここまでやってくれると、これは傑作だ!と興奮もしますね。大ヒットするのも当然だとうなずけるところです。





ただ、上記の妊娠・出産の他にも冷静になって考えるとツッコミどころが多いのも確か。私が一番気になったのはエイリアンの強さでして、確かにその辺の一般人には対抗のしようが無く、音を立ててしまえば確実に捕まって殺されてしまう程度には恐ろしい怪物です。
ですが、最後まで観てみると世界最強のアメリカ軍に勝てるほどの怪物だとは思えない。どのぐらいの数で来たかにもよりますが「メキシコに隕石と共に飛来」したそうだしそこまで大量でもなさそう。



あと、この状況で自分ならどれくらい生きられるか?
ということを考えた時に、クシャミ一発で死ぬことに気付いてしまいます。咳もアウツ。花粉症や風邪の人は1日も持ちませんね。何ならイビキをかく人もすぐ死にます。うっかりコケたり物を落っことしたりしちゃうような粗忽者も駄目。お腹を下してもやばそう。
まあアボット一家はそういう淘汰の末に残ったエリート無音一家なのでしょうが、川や滝などもともとうるさいところに居れば少々の音を立てても大丈夫という設定があるのはどうか。そこで暮らした方が良くはないか。


あとあの釘はおかしいですね。
ものすごい効果的ではあったけど。
なんであんな角度で打ってあるんだよ。

ということで細かいことを気にし出すときりがなく「考えるな、感じろ」系のホラー映画なのですが、そういう楽しみ方が出来る人はぜひ劇場で鑑賞していただきたいなあと思います。











…余談ですが、本作を観ている時、私の隣に居たオッサンがそれはもうパクパクモグモグガサガサモゾモゾノミモノズズズーとひっきりなしに音を立ててる死ぬほど喧しいクソ野郎でして、序盤はまるで集中できませんでした。よりによってこういう静かな映画の時に限ってそんなカス野郎が隣にいるという悲しみ。アボット一家があれだけ音を立てないように頑張っているというのにお前は一体何なんだ。指定席制はこういうことがあるから困る。
まあ15分ぐらい我慢してから他の空いてる席に移りましたけどね…。


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岩石入道
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自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
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