ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

ゲット・アウト 感想(ネタバレあり)

 


「海底47m」を見に行った時やってた予告編で、これが面白そうだったので行ってきました。
しかし、私の住む市内には映画館が5軒ぐらいあるのに一番遠くて行きにくいところでしか
やってないってのはどういうことでしょうかね。
スクリーンも小さいし上映回数も少ない。危うく見逃すところでした。
予告編から只者ではないオーラが漂っていましたが、この作品はかなりの傑作でした。
21世紀に入ってから、私が特に気に入った映画というと
「ランボー最後の戦場」「ゼロ・グラビティ」「マッドマックス怒りのデスロード」
の3つを挙げますが、この「ゲット・アウト」もそれらに並ぶインパクトがありました。

ただ、上に挙げた3つはストーリーそのものはそれほど大したものではなく、
映像や演出、アクションで魅せるタイプの映画です。
それに対して「ゲット・アウト」はアクションなどほとんどありません。
完全にストーリー展開でやられました。
ホラーやサスペンスのネタなどとうに枯渇しており、あとはどういうヒネリを
入れてくるかという点でしか見せられないジャンルだと思っていましたが
まさかこんなのが出てくるとは…



以下ネタバレ全開なので注意してください。

本作、相当多くの伏線を仕込んだ映画です。
1回見ただけでは到底すべてを把握できません。
繰り返し鑑賞したいところですが、なんせ遠い映画館でしかやってないので
それはDVDが出てからにします。


予告編を見た段階では、この映画はこんな風に見えました。

「クリス(黒人男性)がローズ(白人女性)と結婚するために、彼女の実家へ挨拶へ行く。
しかし彼女の両親は上辺は隠しているものの差別主義者で、kkkを過激にしたような組織の一員だった。そして娘との結婚を許せない彼らはクリスを拘束・監禁する」


確かに、はじめはそんな感じで話が進んでいきます。
実家へ向かう途中でシカが飛んできて車にぶつかる事故がありますが、
これは陰湿な嫌がらせでぶつけられたのかな?とまず思わされます。
で、その事故処理時に運転していなかったクリスの身分証を執拗に求めてくる白人警官と
それを正義感から断固拒否するローズのやりとり。
私は日本人なので黒人差別というものはニュースなどのメディア情報から想像するしかありませんが、そういう目から見ても実に典型的な黒人差別とその反対派の描写です。
黒人は嫌われているからこれから差別主義者に酷い目に遭わされてしまうのだろう…
と強く思わされるシーンです。



ところが、ローズの実家に着くと、両親が意外と親切です。
何か怪しいものは感じますが、あくまでも歓迎するという姿勢です。
使用人2人が黒人ですが、それについてもちゃんと触れます。そしてオバマの熱烈な支持者です。
これは芝居なのか?いや、そりゃ何か隠しているには違いないがどうも単純に黒人蔑視という感じでもない。気持ちの悪い得体の知れなさが居心地悪い。
使用人の女性の立ち振る舞いも普通ではありません。
感情表現はあっても何だかロボットのようで、かなり変です。
ここでは陰で虐待や脅迫でもされてて無理やり従っているのかな?という平凡な想像しかできませんでした。


そして夜中になってからこの家の怪しさが爆発します。
使用人の黒人男性が庭にいたクリスに向かって全力疾走してくるシーンは
かなりの恐怖感でした。不気味なのもありますが非常にガタイが良くて強そうなので
パワー的な意味でも怖い。
ローズの父親も言っていましたが、黒人の身体能力は高いですからね。
クリスも使用人ほどではありませんがかなり強そうです。
まさかこの辺が伏線になっているとは思いませんでしたが。
その後クリスはローズの母親に催眠術をかけられてしまいますが、
これはどうなんでしょうね。
ちょっと簡単にかかりすぎな気がしますがそういうものかなあ。
クリスは母親をひき逃げで亡くしたことを引きずっていて、そこに付けこまれた形ですが…
冒頭でシカを車に投げつけられたのもそれを引き出すための行為だったようですが
そういうトラウマが無ければ催眠術にかからなかったのか。
それとも誰でも1つくらいはそういう体験を持っているのか。



そして翌日、ローズの祖父の友人知人が集まりパーティが催されるのですが、
皆一様にクリスのことを称賛します。
…皆怪しいことは怪しいのですが、黒人をけなすようなことは全然言わないのでどうも差別主義者には見えなくなってきました。
とはいえそうでないとホラー的な展開にならないし、メンバーに黒人がほとんどいません。
やはりkkk的な黒人差別組織なのか?
でもローズは違うのはどうして?そういう教育してないの?
と疑問だらけでクリスと同じような不安感を持って見ているとパーティに来た人の中に
黒人がいました。
しかし、写真を撮るとその黒人は正気を失ったような反応をして「GETOUT」と言います。
タイトルですね。
これ、「黒人は出ていけ!」という意味でしか考えてませんでしたが
最後まで見ると全然別の意味でしたね…
写真を友人に送って調べてもらうと、彼はプロローグで誘拐された黒人でした。
やはり彼らが何かしら強い悪意を持った集団であるような雰囲気が漂ってきますが、
未だに目的がはっきりせず、不気味さが増す一方です。ここまで得体の知れない悪意を見せられたのは初めてかもしれません。
直接的な描写のある殺人鬼ホラーよりもずっと怖いです。



そしてもう耐えられないので帰ろうと決意し、荷物をまとめている時にあの写真を発見。
これまでさんざん「私はクリスの味方!差別などもってのほか!」という態度だった
ローズと数々の黒人男性との2ショット写真。
おびき寄せる役だったと分かった時の衝撃はかなり強かったです。
そんな写真撮るなよ、取って置くなよ、見つかるように置くなよ…とも思いましたけどね。


そしてここからは監禁・拘束されて「ホステル」的な展開になっていきますが、
「凝固術」でしたっけ?(名称うろ覚え)
古臭いブラウン管テレビで誘拐の目的を語られますが
不気味すぎてみている最中はさほど疑問に思いませんでしたが
あとで考えると相当無理がありますね。
脳を入れ替えて人格入れ替えるとかさあ…
しかも元の人格も少しは残るようです。もとの脳無いのに?
まあこの辺はちょっとB級臭いトンデモ要素ですが、一応フィクションとして受け入れられる範囲内です。
それより黒人蔑視どころか、黒人の優れた能力を羨んでいた、というのには
やられました。


この映画は「白人が黒人を差別して迫害する映画なんだ」という思い込みが強すぎて
色々だまされました。こういうミスリードの仕方は初めてで、この映画で一番感心したポイントです。


また拘束を解いて逃げる方法も実にスマートです。あんなんで音遮断できるか?とかちょっと思わなくもないですが、耳栓の作り方がさりげなくていいですね。(母親を倒すまで持ってろよという気もしましたが)
そしてクリスの期待を裏切らない戦闘能力の高さ。なかなか爽快です。乗っ取りたくもなりますね。
弟とのバトルも無駄に伏線回収してくれます。そこまでやらなくてもいいのに。すごいサービス精神です。


で、使用人2人にはローズの祖父と祖母が入っていたわけですが…
車ではねたのに見捨てられず連れて行こうとして窮地に陥ります。
普通だったら、何助けてんだ!アホ!とか思うところですが、彼にはひき逃げが出来ない理由があるわけです。細かいところまでよく出来てます。
カメラのフラッシュを浴びると催眠術が解けて元の人格が主導権を握れるようですが、
ここもちょっと都合がいいというかトンデモ要素かなと思いましたね…
とはいえそういうとこまで凝り出したら上映時間が長くなるしこれで正解でしょう。
「ゲット・アウト」とは乗っ取られた人間の叫びの方であり、
男性使用人はローズの腹に1発ぶち込んだあと自分の脳天をぶち抜きました。


ここ、ローズは即死か失神するだろと思うんですが、存外しぶとく粘ります。もはやモンスター扱いですね。
首絞めの時の表情の変化の意味はちょっと私には理解不能でしたが…
駆けつけたパトカーに被害者ぶって懇願するところはマジでバッドエンドを覚悟しましたよ…
しかし監督もそこまで意地悪ではなかったようで、普通にハッピーエンドにしてくれました。
まあ、テーマ的に最後は自由にならないとおかしいんでそれに気づいていれば安心して観ていられたはずなんですが、観ている最中はそこまで考えられませんでしたからね…
いや、それとも白人警官に撃ち殺されてたらそれはそれでアメリカでは強烈な風刺となるのかな?でもそんなの娯楽映画で観たくないですね。


ということで、ブルーレイが出たら即買いの1本ですね。
真相がわかった状態で前半を見直したくなること間違いなし。
買ったら繰り返し鑑賞しようと思います。

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プロフィール

HN:
岩石入道
性別:
男性
自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
krgm200@gmail.com

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